名誉の条件

大企業の倒産や廃業が相次いでいる。現代の落城である。昔は落城前夜、城主と城兵が一夜の歓を尽くして、城を枕に討ち死にしたと言うが、現代では会社のために討ち死にする社員はいないのだろうか。最終学校を卒業して、世間的に一応名の通った会社に入るとき、大多数の者は人生の相当期間をその会社に託する意志があったであろう。もっと以前は、その社に骨を埋める覚悟で入社した者が多かった。自分の人生を託した会社が倒れて、なんの哀惜も感慨もなく、さっさと新しい会社へ移ったり、転職できる者はハッピーである。
だが、現代にも武士は二君に仕えずという意識を持っている社員もいるにちがいない。そのような社員は会社が失われた後、どんな方途に自分の後半生を探すのか。彼らの人生の拠点であった会社が失われた後、社員の誇りや名誉はどうなるのか。自分自身のサラリーマン時代とおもい合わせて、この作品の構想が浮かんだ。

光文社
2001.8
光文社
2005.12

 
 
 
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