猫型の宇宙

単身赴任は歪んだ家族形態である。家族の都合というより、たいていは子供の都合である。それも妻の口実で、実際は妻が夫の赴任地へ()いて行きたがらない場合が多い。特に地方へ赴任する夫に、都会の生活に根を下ろした妻は動きたがらない。子供の受験や進学のせいにして、夫一人を赴任させる。夫も子供のためと言われて、しぶしぶ単身赴任する。たまの休暇に帰って来ても、もはや夫のいる場所はなくなっている。長期の単身赴任の後、再転勤になって帰宅すると、もはや我が家は夫のいない生活が完全にでき上がっている。せっかく自宅に帰って来たものの、いる場所のない夫はどうするか。彼が迷い込んだ猫型の宇宙とはなにか。
私の作品では、よく猫が登場する。例えば『悪魔の圏内(テリトリー)』、『悪の器』など。猫が好きなせいもあるが、猫は最もミステリーに親しみやすい動物である。猫を案内役として、猫型の宇宙へ旅立った単身赴任の宇宙飛行士、これはSFではなく、現実に起こり得るストーリーである。

*角川書店
1991.11
角川文庫(殺人の赴任)
1993.3
光文社文庫(殺人の赴任)
1999.2

 
 
 
このページはフレームの構成ページです。メニューが表示されない場合、こちらをクリックしてください。
『当サイトの内容一切の無断転載、使用を禁じます。』