夜の闇の中にほんのりと浮かぶ窓の灯。一戸建ての窓はもちろん、マンモス団地や超高層ビルの窓一つ一つにも人生が象徴されている。一見、規格的な集合住宅の窓の内にも、それぞれ異なる人生がある。
一日の長い勤めを終えて帰宅して来たサラリーマンが、我が家の窓の灯を目にしたとき、ほっと安堵する反面、その灯火が消えていたとき、あるいは独身者がいつも暗い窓を見たとき、それぞれのおもいが交錯する。窓は人生を象徴しているようであるが、窓のない人生、すなわちホームレスや定住所を持たない遊牧民や、旅役者や、行商人などは、どのようなおもいで窓を見つめるのであろうか。
おもえば窓にはそれぞれの人生を凝縮しており、窓の内に人間のミステリーが隠されている。人工の美学と言われるミステリーは、時に人間が操り人形となり、その人工性ゆえに人間不在のこともあるが、窓のまったくない人間の家はない。窓の奥に人生を追求しようとして、この作品が生まれた。

集英社
1991.1
*集英社
1996.9
集英社文庫
1998.4
   
   
光文社
2004.12
   

 
 
 
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