暗黒凶像

医学書をなにげなく読んでいたとき、「ボッチの残像」という一人の人間の目に発生する不思議な現象を知った。この現象を2人の人間の目に発生できないかという発想が、この作品の発端である。
どんなときにプロットをおもいつくのかという質問を、ミステリー作家はよく受ける。生活のあらゆる場面でと答えているが、それでは質問者にとって抽象的すぎて答えにならないようである。私の場合、読書、それも小説だけではなく、専門書、学術書、辞書、哲学、百科事典などからヒントを得ることが多い。それも読書中はなにげなく読み過ごしていて、しばらくたってから、別の経験によって潜在意識の中に畳み込まれていた過去の読書の記憶が触発されることが少なくない。
時間にたっぷりと恵まれていた学生時代は、私の乱読の宝庫であり、ボッチの残像は過去の遺産とも言える乱読時代の残像である。

講談社
1990.12
*講談社
1992.1
講談社文庫
1993.11
中央公論新社
2006.8

 
 
 
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