恋人関係

熱心な愛読者である大学教授と酒席を共にしたことがあった。初老の教授は、「あなたの作品の中で、『恋人関係』だけは許せない。50代の作家が20代の女子大生と恋愛をするなんて、そんなうまい話があってたまるか」と言った。教授は悔しげであり、羨ましそうでもあった。
謹厳実直な教授がそんな表情をしたので、私は内心おかしかった。きっと教授は青春ど真ん中の女子大生に囲まれながら、彼女らを絵に描いた餅として眺めている自分と、『恋人関係』の主人公を比べていたのであろう。私はその教授に、より人間味をおぼえた。

*角川書店
1987.6
集英社
1988.12
角川文庫
1989.5

 
 
 
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