誘鬼燈

「オール読物」から短期集中連載の依頼がきた。前編・後編で400枚、私は前編200枚を書き上げて提稿した。
数日後、当時の安藤満編集長(後に社長)が私の原稿を持って、突然訪ねて来た。以前、「オール」からは何回も原稿を突き返された苦い経験があった。私はたぶん原稿が気に入らなくて返却に来られたのだろうと覚悟を決めた。
安藤氏は私の顔を見ると、おもむろに原稿を差し出して、「大変面白い。話半分でつづきでは精神衛生上よろしくないので、後半を書き上げてもらって、一挙掲載したい」と申し出た。私は仰天した。喜ぶと同時に困惑した。ぎりぎりの締め切り日まで数日を残すのみである。
だが、安藤氏の期待とせっかくのチャンスをつぶすわけにはいかない。私は後半約200枚を数日で書き上げ、『誘鬼燈』400枚が一挙に掲載された。編集者と作家の火花を散らすようなやりとりが実った作品である。
この作品の取材に、角川書店の橋爪懋氏が全面的に協力してくれたことも稀有であった。だが、なぜか、この作品が角川文庫に入るのは遅れた。

文藝春秋
1976.4
*光文社
1978.3
文春文庫
1978.3
角川文庫
1979.1
飛天文庫
1994.8
ケイブンシャ文庫
1997.1
徳間文庫
2000.1
   

 
 
 
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