肉食の食客

〈肉食の食客/枕に足音が聞える/禁じられた墓標/青の魔性/共犯の瞳/褥の病巣/犯意の落丁/鉄筋の猿類/燃えつきた蝋燭/途中下車〉

私の父は当時では珍しい個人タクシーを経営していて、今日のクラシックカー3台を保有して、運転手を雇い、父自らも運転していた。帰り車にはただで客?を乗せて我が家へ連れて来た。時には帰り車の乗客が食客(居候)となって、我が家に逗留した。彼らは数日から半年ぐらい、我が家に滞在して、またどこかへ行ってしまった。彼らは我が家にお礼として珍しい料理のつくり方や、芸や秘伝の薬、読みさしの本、諸地方の情報など、一種の居候文化を残して行った。
我が家を去った後もしばらく、父と文通がつづいたり、年賀状がきたりしたが、いつの間にか疎遠になっていった。我が家の食客はおおむねよい人たちばかりであったが、中には父から金を借りたまま返さない者もいた。
彼らの1人から、家の土台や台所、風呂場などに寄生して、家全体を崩壊させるシロアリの話を聞いた。自分自身が他人の家に寄宿している居候が恐るべき食客の話をして、その防除法や予防法をおしえてくれたのであるから、これも居候文化の副産物であろう。

 
講談社
1974.12
*講談社
1976.2
講談社
2003.4

 
 
 
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