情熱の断罪

〈夢の虐殺/人間解体/姦の毒/黒い合併/被殺の錯誤/情熱の断罪〉

ベストセラーのベースはもちろん作品であるが、これにいろいろな要素が加わってベストセラーとなる。出版されたときはあまりパッとしなかった作品が、映画化されてヒットし、作品もクローズアップされるというケースがある。映像の援護射撃に加えて、時代や読者のニーズ等が同調(シンクロナイズ)して、大ブレークを起こすこともある。
また作品自体は大したことはなくとも、文壇が総褒めして、出版社や読者が追随するケースも少なくない。グランプリの受賞作品も一時的ではあるが、ベストセラー入りする。
だが、これらベストセラーを支えるさまざまな要素の中で、忘れてはならないのが編集者の存在である。いわば編集者が作品という神輿の担ぎ手である。編集者が単なる担当の域から出て、その作品に惚れ込み、肩に担いでベストセラーへ押し上げる。なによりもまず作品の第一読者としての惚れ込みようが読者に伝わっていく。担当編集者が作品のファンになってくれることが、ベストセラーへの関門といってもよい。
小説は作者が一人で書くものであるが、行きづまったり、苦悶したり、時には作品から逃げようとする作者に、書きつづけさせるエネルギーを補給してくれるのが編集者の情熱である。私は幸い、情熱的な編集者に恵まれてきた。作者の執筆の火を燃やしつづけてくれた編集者の情熱が作品に化体してブレークしたとき、最も喜んでくれるのが編集者である。
担ぎ手の去った神輿もばかにはならない。担ぎ手が替っても、またいつ別の担ぎ手が現れるかもしれない。ベストセラーには必ず情熱的な編集者がついている。編集者の情熱から、この作品の書名が生まれた。

 
講談社
1973.8
*講談社
1975.2
講談社文庫
2002.7

 
 
 
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